
日本経済新聞 1995年7月29日より
日本経済新聞 1995年7月29日より
Nikkei-X Volunteers
ボランティアーズ No.5 障害者と交流
三洋電機 秋吉恒一郎さん

写真説明: ランプと言われる補助具を使用して障害者の方でもボーリングが楽しめるようになっています。
友達付き合いしたい
「障害者と話したいと思っても、なかなか機会がないですね」「そんなことはない。君も一度、顔を出してみればいいよ」。三洋電機のAV事業本部テレビ事業部の秋吉恒一郎さん(33)は90年夏、高校時代の恩師を訪ねた際に誘いを受けた。
秋吉さんは大学卒業後、大学院や英国留学を経て、この年の春に三洋電機に入社。就職の報告も兼ねて遊びに行った日のことだ。当時、恩師は養護学校で教えながら、京都市にある身体障害者の外出介助団体「羊の会」で活動をしていた。ちょうど毎年恒例となっていた夏の合宿が一週間後に迫っていたため、声を掛けたのだ。
「私が行っても大丈夫ですか」。ちょっと不安だったが、「行けば何とかなるよ」と励まされた。
会社という組織にとらわれない生き方には以前から興味を持っていた。入社前には、国際協力事業団の青年海外協力隊に応募しようと考えたこともある。夏休み期間に当たるうえ、会社の外でも付き合いの範囲を広げたいと考えていた秋吉さんは参加を決めた。
滋賀県近江八幡の琵琶湖畔で実施した二泊三日の合宿は、約三十人のボランティアは浜辺での監視やイベントの準備、片付けに奔走する。
「ちゃんとたべなあかんで」「ちょっとまってぇや」。障害者とボランティアが親しい友達のように話していることに驚いた。横で聞いていて、冷や冷やするようなきわどい会話もある。しかし、当人たちは全く気にしていない。付き合いのなかで、ぎりぎりの一線が分かっているのだろう。
合宿に参加してみて、自分が普段楽しんでいる休日の買い物や外食、友人との映画鑑賞などが、障害者には非常に難しいことが分かった。
さまざまな障害者に出会った。京都大学の学生は若干、言葉は聞き取りにくいが、話していて明せきな頭脳に驚かされた。一方、いつも目を輝かせて、赤ちゃんを見ると「かわいい」、女性には「きれいなおねえさん」と素直に感情を表現する人もいる。「彼らともっと付き合いたい」と思った。
それから二ケ月に一度、日曜日に羊の会が主催する日帰り旅行に参加している。二-三週間前に、他のメンバーと打ち合わせをする。当日の朝は「こんなことを話そう。あの話しはどうなったのか聞いてみよう」と思いをめぐらせる。「二ケ月ぶりに友達に会って、どこかに飲みにいこう」という感覚だ。相手が障害者であることなど、もはや関係ない。
記録係を買って出た秋吉さんは写真を撮って皆に配る。夏の合宿ではビデオを回す。毎年、十月ごろにメンバーが集まって編集作業をして、十二月のクリスマスパーティーで公開する。
今年も夏の合宿が二週間後に近付いている。秋吉さんにとっても夏休みの楽しみだ。「今度は何をして遊ぼうか」と心待ちにしている。
山口雅司
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